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私は、美術表現によって皆様を日常から連れ出し、

イリュージョンをかける、

最高のエンターティナーになりたいのです。

だからお願いです。

是非会場に足を運んで下さい、

きっと楽しんで頂けるはずです。


 

柴田英理

 

 

   
   
untitled
 
Who is Mary?
 

femmes fatales

-Caterina de Medici-

 
45×80×35p   55×60×30p   33×55×28p  
2008年   2008ー2009年   2008ー2009年  
           

 

 

アイドル崇拝とギャルたちの逆襲

 

 巷では、ハリウッドセレブに憧れ、ゴージャスルックを日本化するギャルの文化が花盛り。頭にもツメにも、これでもかとデコレーションを盛る小悪魔アゲハの過剰な流儀は、とにかく奇形でパワフルそのものだ。女子の男装や男子の女装が、もはや遊びの一モードになりつつある昨今、日本が世界に誇るコスプレ文化は立派にファッション化したと言えるのかもしれない。人の外側を覆うファッションやメイクは、キャラはもちろん性差さえ容易に着脱可能な、着ぐるみの一種なのだ。

 若き彫刻家、柴田英里の作品が面白いのは、そうした、とらえどころのない今の多重人格化した人間像を、実体感のあるモノとして表現している点だ。たとえば、盛り盛りヘアのキャバ嬢を描いたテラコッタの胸像「藪の中」(2007)。派手な色彩の人体が、芸術らしく台座に鎮座する様は、一見アンバランスで違和感を与えるものの、かつては正統な彫像モデルをつとめたヨーロッパの貴婦人達を、現代の女性達が遠く参照する奇妙さを思えば、納得がいく。連綿と続く装飾文化が美術史的にでなく、『ベルばら』などのマンガを介して伝播している事実も面白く、石膏製のヘアウィグ作品なども発表している柴田の世界観は、やはりどこかマンガ的だと思えてくる。

 そもそも耐久性の低い、けれど手の跡をストレートに残せる素焼きの手法は、歴史的記念碑であり続けた鋳造彫刻の歴史からは、大きくはずれる異端的表現である。彼女のつくる素焼きの女性達が台座から降り、まるで水辺を泳ぐ精霊のように頭部やトルソが床置きされた展示は、原始の造形に遡る神話世界のようでもあり、粗野な質感が女達の力強さを感じさせた。女性を表現することにこだわる柴田は、マッチョな彫刻史に果敢に立ち向かう勇猛な女性アーティストなのだ。テラコッタに釉薬とキラキラ素材をトッピングした裸婦像「楽園」(2008)は、ステレオタイプな裸婦像への爽快な一撃だ。

 そんな、彫刻という王道のメディアを使って、柴田が最近編み出した表現が、頭部を逆さにした彫像である。色違いの衣装を着た二人のトルソ「untitled」(2008)は、その華やかさに反して、ギロチンのように顔が上下反転し、見る者をギョッとさせる。続く「Who is Mary?」(2008-09)や「Femme fatale」(2009)では、メアリー・スチュワートやマリー・アントワネットといった歴代の悪女の姿を再現し、やはり釜入れ直前に顔を反転させて、世間を騒がせた女の美醜と怨念を象徴的に表現してみせた。刳り抜かれた目の凄みは満点で、装飾の裏に隠されていた女の性が壮絶に伝わってきた。

 歴史的人物の偉業を湛える彫像や、古くは宗教における聖人像は、権力を集約的に示すアイコンであり、人々にとっての崇拝の対象だった。けれど、世界を統一するイデオロギーなどもはやない現代において、真に人々の気持ちをつかめる存在は、アイドルである。たとえ失態をしでかして世間に叩かれようとも、その失敗さえも糧にし、不死鳥のように生きのびる女性アイドル達のたくましさ。彼女達に崇拝される者の尊さと浅ましさの二面性を見いだす柴田は、不景気の名古屋へ送る応援メッセージとして、新作にポップ・アイドルの明るさを吹き込んだ。

「ギャルだって、腐女子だって、救いを求めているような気がするんです。昔は仏教が担った偶像崇拝の役目を、今はアイドル達が担っている。さげすまれたりもしますが、それによって新たな価値が生まれることもある」(柴田)。

 憧れの対象には簡単に同化して成り代われる変身社会で、ピンクでキラキラなファッションを武装に、図太く生きのびようとする女の子達のしたたかさ。セラミックで脆さと柔軟さを表現しつつ、女の本質をつく柴田の作品は、体育会系男子がつくり上げた彫刻の価値観をあっけらかんと転倒させる新しい彫刻だ。情報に翻弄される今だからこそ、彼女の作品が放つインパクトは大きい。

 

 

 


宮村周子Noriko Miyamura (編集者、来来/LaiRai

                             

 

 


 

柴田英里

略歴
1984年 名古屋生まれ
2009年 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
2009年 東京芸術大学彫刻学科大学院修士課程在籍
 
個展
2009年 NODA CONTEMPORARY、(名古屋)
 

「楽園」  ギャラリーK(東京)

   
グループ展
2009年 武蔵野美術大学優秀作品展 武蔵野美術大学(東京)
  アートサイト岩室温泉 岩室温泉 旅館「綿屋」(新潟)
  五美術大学卒業制作展 国立新美術館 (東京)
  アーツチャレンジ2009 愛知県芸術文化センター(名古屋)
2008年 Via Art Osaka 08 For Rent!!For Talent!!4 三菱地所アルティアム(福岡)

 

受賞
2009年 岡本太郎現代美術賞入選 岡本太郎美術館(川崎)
2008年 東京ワンダーウォール入選展 東京都現代美術館(東京)
   

 

 

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