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伊藤雅恵 個展 2008.9.4(thu)-9.27(thu)
 
 
制作ステイトメント
 

心が震えるような記憶。しびれるような記憶。今までに迎えたことのある特別な気持ちを、花の写真を見ながら絵にしています。
記憶を思いながら花の図像を見ていると、花は躍動しだし、そこにある光や風を増幅しだす。花の図像を見ながら記憶を辿ると、記憶は色づき、よりドラマティックなものへと変化していく。
それらを抱えながら、絵の具をのせる。じんわりと染み付ける。もったりと盛る。やわらかくなでる。ひっかくようにこする。触らないように守る。心の空白や過剰は絵の具と強く結びついたり離れたり花の形をなぞったりしながら、一体となっていきます。
うまく渾然一体となると、新しい何かが生まれるような感覚があります。私の記憶という個人的であったものが、鑑賞者の胸に届くような何か強いものに変わる。その事件を起こすことが制作の目的です。

 
伊藤 雅恵
 

 

 
迷子の人
 
  迷子の人  
 

1300×1300mm

 
  oil painting 2008  

 

しみるようなこと
忘れないアクシデント
眺めているだけでは足りない
向こうを見たい
しみるようなこと 忘れないアクシデント 眺めているだけでは足りない 向こうを見たい

1300×1300mm

1820×2270mm

1620×1940mm

1300×1300mm

oil painting 2008 oil painting 2007 oil painting 2007 oil painting 2008

 

足をつけたまま飛躍
両手で
Lifeblood
モンスター(ニューライフ)
足をつけたまま飛躍 両手で Lifeblood モンスター(ニューライフ)

500×600mm

1300×1620mm

650×850mm

1120×1620mm

oil painting 2008 oil painting 2008 oil painting 2008 oil painting 2007

 

Falling(Advance)
This fever
甘そうな人
Break-in
Falling(Advance) This fever 甘そうな人 Break-in

650×533mm

1620×1300mm

650×460mm

910×910mm

oil painting 2008 oil painting 2008 oil painting 2008 oil painting 2008

 

 

 
もっと見たいFLUIDなアクシデント
 

「忘れないアクシデント」。今年の「VOCA展」に伊藤雅恵が出品した作品には、こういうタイトルが付けられていた。私にとっては、ちょうど2年前、東京の藍画廊で彼女の作品と遭遇したことこそ、まさに「忘れないアクシデント」である。


VOCA展は毎年春、上野の森美術館で開催される絵画などの公募展である。全国の専門家から推薦された若手作家が出品する。私も推薦人である。2006年の9月に伊藤に出会った瞬間、もう次のVOCA展には彼女を推薦しようと決めていた。当時までに12回、VOCA展に作家を推薦していたが、あれほど直感的に推薦を決めたことはなかった。


衝撃。それが、伊藤の絵の第一印象に近い。画面に炸裂する色、色、色。色の嵐。旋風。渦。奔流。花吹雪か白昼夢か。現実の風景か幻か――。特筆すべきは、まず、使われている色が色彩のほぼすべての範囲に及んでいること。自由自在。次に、これが最も大事なのだが、筆がちゃんと走っていること。画面のどの一部を取って見ても「動き」がある。絵の具が踊り、輝いている。この「筆の動き」こそ、私が絵を見るときに一番重視する点なのである。


VOCA展に続いて、名門・鎌倉画廊で4人の若手・中堅画家を取り上げた展覧会があった。ここでも私は伊藤を推薦した。『毎日新聞』の名美術記者、三田晴夫氏が展評を書いてくれた。その中で、私のことを「ペインタリネス、つまりは塗りの魅力にこだわってきた」と紹介してくれた。「ペインタリネス」は「絵画らしさ」のこと。光栄の極みだが、実はちょっと違う。私の考えるペインタリネスとは「塗り」ではなく、上に書いたように「筆の動き」である。幸い、私だけの考えではないようだ。
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ちょっと前、東京のある所で、ニューヨークから来たという白人の美術商と立ち話をしていた時のこと。30歳ぐらいか。彼が突然言った。
「日本人はペインティング(絵画)というものを分かっていないんじゃないか。ペインティングとは、もっとFLUIDなものであるべきなんだよ。日本人は線と線の間に色を塗ることをペインティングと勘違いしているんじゃないかな。タカシ・ムラカミはそのいい例だよ」
「FLUID(フルーイド)」とは「流動的な」といった意味。流れるような筆の動きのことだろう。前衛書道のようなものが、彼らの考えるペインティングなのかもしれない。
それはともかく、今の日本の現代美術家の作品は「安すぎる」「買いだ」と、具体的に作家名を出して興奮気味に語っていた。
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漆で有名な国だけに、日本の画家には「塗り」にこだわる人が多い。まさに漆のように、むらなくきれいに塗ってしまう。機械で色を吹き付けたようにさえ見え、筆の走った跡はない。20世紀の「冷たい抽象」絵画にはそうした名作も多いが、あれは一つの実験であって、絵画の本質とは違うと思う。良くも悪くも、20世紀は実験の時代であった。実験を終え、本質に帰るのがこれからの時代だろう。
職人のように塗る画家はたくさんいるのだが、上手に筆を走らせられる人は珍しいのが日本の現代絵画の実情だ。伊藤は「ペインティング」のできる貴重な一人。その長所を失わず、いつまでもアクシデントを起こし続けてほしい。


 
名古屋 覚(なごや・さとる=美術ジャーナリスト)
 
 

 
伊藤雅恵

略歴
1982年 愛知県生まれ
2005年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科 卒業
 
個展
2006年 「ラインのむこうのギャラクシー」 藍画廊, 東京
2007年 「ドラマティックス」 Bunkamura GALLERY+/ Arts&Crafts , 東京
  「モンスター・イン・ミー」 藍画廊, 東京
2008年 「ふさわしいけしき」 トーキョーワンダーウォール都庁 , 東京
  solo exhibition, NODA CONTEMPORARY, 名古屋
 
主なグループ展
2006年  SAA展, 武蔵野美術大学美術資料図書館, 東京
  「Secret Play」 イリーガリンガレージ, 東京
  武蔵野美術大学課外センター展示室, 東京
2007年 トーキョーワンダーウォール入選作品展, 東京都現代美術館
2008年 VOCA展2008, 上野の森美術館
  「絵画の春」 鎌倉画廊, 神奈川
   
受賞歴
2007 トーキョーワンダーウォール公募2007, トーキョーワンダーウォール賞
2008年 VOCA展2008, 佳作賞
 

 


 

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