北上ちひろ「鍵穴を覗いて」

2018年6月8日(金)~6月30日(土)
Open/11:00~18:00 Closed/日・月



おもちゃのビーズ、ガラスやあめ玉の透明感など、チープなものが輝く色と事象。
子供部屋のカーテンの揺れる布に包まれている世界の安心感や、心地のいいひとりぼっちの特別な空間。
それらに憧れた幼い頃の私の小さな感動と憧憬を、大人になった今でも大切にしたい。
また、幼い頃に特別だったものへいつまでも一途でいる私たちは、ある種の愚かさや醜さを合わせ持っていると考える。
私の絵の中の黒い部分は、そういった怖さや儚さを映しているのだと思う。
 高価な宝石よりも、プラスチックや鍍金の安価なきらめきや、少女のころに見た世界のひろがりが、本物の宝物でありますように。
誰かの心の中に眠る、あこがれの箱を紐解くような感覚や質感を表現していきたい。 ―北上ちひろ


北上ちひろ個展に寄せて


 北上ちひろの画面には、大胆な色彩のうねりがあり、一見それは力強い筆の流れを表しているかのようだが、その描線は強固な意志を持って存在するというよりは、どこか不安定で脆弱で頼りない筆致に見える。原色をほとんど使っていない画面は、淡く不鮮明で朧げであり、どこか儚くて捉えどころがない。それは手探り状態のまま観るものをも巻き込んでいく。成熟を拒否し、終わらない青春を生きようとする少女のように、それが必然であるかのような説得力と覚悟を持って。

 描かれているものにはっきりとした像はなく、いくつかの不定形なフォルムと色彩が組み合わされて、複雑な層を成している。例えば、かわいいものをかわいく描くという単純な表現ではなく、かわいいと思う感情の揺れ、その一瞬の機微、心のメカニズムをキャンバスに刻印し、瞬間的な「かわいい」を永遠に封じ込めてしまいたい、という無邪気で切実な祈りが画面を満たしていて、それが独特な余韻を残す。

 世の中にはかわいいものが溢れている。かわいい表現というものも無数にある。北上ちひろもその「かわいい」に取り憑かれてしまった多くの人々の中の一人だ。しかし、彼女を捉えて離さないのは、かわいいものに触れた時の自身の心の動きではないか。彼女が反復して描き続ける世界は単にかわいい表象だけではなく、かわいいと感じるその神秘的で不明瞭な感覚そのもので、それは結果的に抽象表現にならざるをえない。いわば「かわいい抽象画」とでも呼ぶべき新鮮な表現の可能性がそこにある。その筆致の不確定さ、拙さまでもが、「かわいい」に取り憑かれてしまったものの幸福と途惑いの表現なのだ。

黒坂行衡(NODA CONTEMPORARY)




会場風景


会場風景


「ピカピカの彼方Ⅰ」油彩、アクリル、キャンバス 2018 F100


「ピカピカの彼方Ⅱ」油彩、アクリル、キャンバス 2018 F100
(第9回はるひ絵画トリエンナーレ佳作作品)


「プリンセスルームに鍵はない」油彩、アクリル、キャンバス 2018 F20

「昼寝 ハニーミルク」油彩、アクリル、石膏地 2016 F10


「カーテンの向うⅡ」帆布、油彩、アクリル、ラメ、布 2017 100×100cm


北上ちひろは現在宮城県在住の女性作家で、名古屋では初の個展となります。
おもちゃのビーズや宝石、キラキラと光るガラスや飴玉。道草、妄想、トリップ、夢見ること。
ちょっとした家出のような甘く欝々とした逃避行、心地のいいひとりぼっちの空間…。
彼女が幼いころに覚えた小さな感動、憧憬を独特の色彩表現で形にします。
愛らしさに加え、いつまでも子供時代の感情を捨てきれないヒリヒリ鬱々とした焦燥感をあえて同居させ描きます。
かつて大切にしていたもの、今はもう忘れかけてしまっているような小さな感動が、
どんな高価な宝石より大切にするべきものであり、誰しもの心の中に眠るあこがれの箱を紐解くような、
そんな感覚を思い起こさせてくれます。


【きたかみ ちひろ】

1994 宮城県出身
2017 東北芸術工科大学芸術学部美術科洋画コース 卒業

受賞歴
2018 第9回はるひ絵画トリエンナーレ 佳作
2016 三菱アート・ゲート・プログラム第33回 入選
2016 ギャラリーへ行こう2016 入選
2015 FACE2016損保ジャパン日本興亜美術賞 入選
2015 第69回二紀展 入選
2014 リキテックスアートプライズ2014 入選
2014 第68回二紀展 入選
2013 第67回二紀展 入選
2012 第75回河北美術展 入選

個展
2017 ピカピカの彼方 RISE GALLERY Creativity continues 2016-2017 RISE GALLERY 東京
2016 やわらかであればいい RISE GALLERY Creativity continues 2016-2017 RISE GALLERY 東京
2016 ここにあったきらめき RISE GALLERY Creativity continues 2016-2017 RISE GALLERY 東京
2015 カーテンとランド Studio144 東北芸術工科大学 山形

グループ展/活動
2018 東北の風Ⅳ 新宿伊勢丹5階アートギャラリー 東京
2017 山口百花+北上ちひろ+干場月花+ikedaayako+島田真悠子 グループ展RISE GALLERY Creativity continues 2016-2017
   RISE GALLERY 東京
2017 山口百花×北上ちひろ二人展 RISE GALLERY Creativity continues 2016-2017  RISE GALLERY 東京
2016 ギャラリーへ行こう2016 数奇和ギャラリー 東京/名古屋
2016 FACE2016損保ジャパン日本興亜美術賞展 東郷青児記念美術館 東京
2016 グループ展 あの子このごろ4 ギャラリー専 仙台
2015 個展 カーテンとランド 東北芸術工科大学Gallery144 山形
2015 二紀展 仙台巡回展 せんだいメディアテーク 仙台
2015 グループ展 あの子このごろ3 ギャラリー専 仙台
2014 リキテックスアートプライズ2014アートフェア 3331ArtsChiyoda 東京
2014 グループ展 アイマイホログラム Gallery Concel Shibuya 東京
2014 共同制作 sweet sweet tipi 万国學生芸術展覧祭 東京ビックサイト 東京
2014 グループ展 あの子このごろ2 ギャラリー専 仙台
2013 グループ展 おかえり Sendai Artist-run Place SARP 仙台
2013 グループ展 あの子このごろ ギャラリー専 仙台


北上ちひろ 展「鍵穴を覗いて」
2018年6月8日(金)~6月30日(土)11:00~18:00

会場:NODA CONTEMPORARY
※日、月休み
※入場無料